安全なパスワードの作り方|長さ・ランダム性・使い回さないの3原則

安全なパスワードとは、他人に推測されず、総当たりでも現実的な時間で破られないパスワードのことです。これを実現する条件は突き詰めると3つだけです。十分に長いことランダムで規則性がないこと、そしてサイトごとに使い回さないこと。この記事では、この3原則を満たすパスワードを実際に作る手順と、作った後の管理までを通しで解説します。手早く作るならパスワード生成ツールを使うのが確実ですが、なぜそれが安全なのかを理解しておくと応用が利きます。

安全なパスワードの3原則

細かいルールの前に、優先順位を押さえます。重要度は上から順です。

原則意味目安
長さ文字数が多いほど総当たりに強い。強度への影響が最も大きいランダム生成で12文字以上、できれば16文字
ランダム性人の癖や意味のある単語を避け、予測不能にするツールで生成、または無関係な単語の組み合わせ
使い回さない1つ漏れても被害を1サイトに封じ込めるサイトごとに別のパスワード

「記号を必ず入れる」「大文字と数字を混ぜる」といった複雑さのルールは、じつは長さほど効果的ではありません。詳しくはエントロピーで強度を測るで数値的に説明していますが、8文字に記号を詰め込むより、12文字以上にするほうがはるかに強くなります。

作り方1:生成ツールでランダムに作る(推奨)

もっとも確実なのは、人が考えず、ツールに乱数で作らせる方法です。人間が「ランダムに」考えた文字列には必ず癖が出て、攻撃者はその癖を突いてきます。

  1. パスワード生成ツールを開きます。
  2. 文字数を12〜16文字に設定します。長くできる場面では長いほど安全です。
  3. 英大文字・小文字・数字・記号をすべて有効にします。
  4. 生成された文字列をそのままコピーし、パスワードマネージャーに保存します。

ブラウザやOSにも安全なパスワードを自動生成する機能があり、これらは暗号学的に安全な乱数を使っています。生成したパスワードは覚えようとせず、マネージャーに預けるのが前提です。

作り方2:覚える必要があるならパスフレーズ

マスターパスワードなど、どうしても暗記が必要なものは、無関係な単語を4語以上つないだパスフレーズにします。たとえば意味のつながらない単語をランダムに選んで並べる方式です。長くできるうえ人間が覚えやすく、単純な単語1語より格段に強くなります。作り方と強さの理由はパスフレーズとパスワードの違いで詳しく扱います。

注意点は、有名なことわざ・歌詞・定型句を使わないことです。これらは攻撃者の辞書に載っているため、長くても弱くなります。あくまで単語をランダムに選ぶのがポイントです。

やってはいけないパスワードの作り方

次のような作り方は、長さがあっても危険です。

NGな作り方なぜ危険か
password、123456、qwerty流出パスワードの定番。真っ先に試される
誕生日・名前・電話番号SNSなどから容易に推測できる
単語のl33t変換(例:p@ssw0rd)置き換えパターンは攻撃ツールが織り込み済み
キーボードの並び(asdf、1qaz)パターンとして機械的に試される
基本形+サイト名(Pass!amazon 等)1つ漏れると規則を見破られ横展開される

とくに最後の「基本形+サイト名」は、使い回しを避けたつもりでも規則が単純だと見破られます。使い回しの本当の怖さは使い回しが危険な理由で解説しています。

作った後が本番:管理と多要素認証

強いパスワードを大量に作っても、覚えられなければ使い回しに逆戻りします。そこでパスワードマネージャーで一元管理します。覚えるのはマネージャーを開くマスターパスワード1つだけにし、それを最も強いパスフレーズにするのが基本戦略です。

  • 各サイトのパスワードはマネージャーに生成・保存させ、自分では覚えない。
  • 重要なアカウントには、パスワードに加えて二要素認証(2FA)や、より安全なパスキーを設定する。
  • 過去に使い回していたパスワードは、漏洩確認サービスで点検し、順次作り直す。

なお、以前よく言われた「パスワードを定期的に変更する」は、現在は推奨されていません。無理な定期変更はかえって弱いパスワードや使い回しを招くため、変更するのは漏洩の疑いがあるときだけで十分です。

用途別の使い分けとまとめ

  • 普段のWebサービス:ツールで12〜16文字をランダム生成し、マネージャーに保存。
  • マスターパスワード:暗記できる長いパスフレーズ。使い回し厳禁。
  • 重要アカウント(メール・銀行):強いパスワード+2FA/パスキーを併用。

結局のところ、安全なパスワードづくりは「長く・ランダムに・使い回さない」を守り、面倒な部分は生成ツールとマネージャーに任せることに尽きます。まずは1つ、いちばん大切なアカウントから作り直してみてください。

よくある質問

安全なパスワードは何文字にすればいいですか?

ツールでランダムに生成するなら12文字以上、可能なら16文字が目安です。文字数は強度への影響が最も大きく、長いほど総当たりに強くなります。8文字は記号を混ぜても短時間で破られる可能性があるため、避けるのが安全です。

記号を必ず入れないと危険ですか?

記号を入れると使える文字が増えて強度は上がりますが、長さほど効果は大きくありません。記号が使えない場面でも、文字数を増やせば十分な強度を確保できます。理想は長さと文字種の両方を確保することですが、優先すべきは長さです。

自分で考えたパスワードより生成ツールのほうが安全ですか?

はい。人間が考える文字列には無意識の癖が出て、攻撃者はそのパターンを突いてきます。生成ツールは暗号学的に安全な乱数を使うため、規則性のない本当にランダムなパスワードを作れます。覚える必要のないものはツール生成が確実です。

パスワードは定期的に変更したほうがいいですか?

現在は、漏洩の疑いがない限り定期的な変更は推奨されていません。無理な定期変更は、少しずつ変えただけの弱いパスワードや使い回しを招くためです。変更すべきは、サービスからの漏洩通知や不審なログインがあったときです。

参考・出典

  • NIST SP 800-63B デジタルアイデンティティガイドライン(2017年公開、その後改訂)
  • 総務省 国民のためのサイバーセキュリティサイト パスワードの設定(2025年参照)
  • IPA 情報処理推進機構 パスワードの管理に関する注意喚起(2025年参照)

執筆者について

山本 由紀 — セキュリティ編集者

パスワード生成ツールを管理し、パスワード安全性のガイドを最新の推奨事項に沿って確認しています。

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